メカニカルキーボード界隈に激震が走ったのを覚えているでしょうか。
「Rainy75」というたった一つの製品が、ハイエンドクラスの打鍵感と工芸品のような質感を、信じられない価格で市場に投入し、これまでの常識をすべて過去のものにしました。
「あのクオリティで、もしゲーミング性能に特化したモデルが出たらどうなるのか?」
世界中のキーボード愛好家とゲーマーが抱いたその妄想が、ついに現実のものとなりました。
その伝説を作ったメーカー「WOBKEY(WOB)」が、満を持して磁気スイッチ(ホールエフェクト・HE)搭載のラピッドトリガーキーボード市場に参入したのです。
その名は「WOBKEY ZEN65 RT」。
昨今、VALORANTやOverwatch 2といった0.1秒を争うFPSタイトルにおいて、ラピッドトリガー機能はもはや「チート級の機能」ではなく「勝利への必須条件・標準装備」となりつつあります。
Wootingが切り開いたこの市場には、現在数多のメーカーが参入し、スペック競争は飽和状態にあります。
0.1mmの設定幅や8000Hzのポーリングレートは当たり前となり、ユーザーは「数値」だけでは製品を選べなくなってきています。
そんな中、後発となるWOBKEYが提示したのは、単なるカタログスペックの数値競争ではなく、徹底した「物理的な安定性」と「所有欲を満たす美学」、そして「楽器のような打鍵音」でした。
私はこれまで、安価なプラスチック製から数十万円するカスタムキーボードまで、数多くのゲーミングキーボードに触れてきましたが、ZEN65 RTは箱を開けた瞬間から「あ、これはモノが違う」と直感させる圧倒的なオーラを放っています。
Rainy75で培った驚異的なアルミ加工技術と、競技シーンで勝ち抜くための最新テクノロジーが融合した時、どのような化学反応が起きるのか。
この記事では、この注目の新作「ZEN65 RT」について、スペックの深掘りから、実際に競技タイトルで使用した際の挙動、独自の内部構造、そして従来のゲーミングキーボードではおざなりにされてきた打鍵感に至るまで、徹底的にレビューしていきます。
もしあなたが、「性能も大事だが、デスクに置いた時の美しさや打鍵音にも妥協したくない」と考えているなら、このキーボードは間違いなく候補の筆頭に上がるはずです。
WOBKEY ZEN65 RTの基礎知識とラインナップ

Rainy75で伝説を作ったWOBKEY初の磁気キーボード
WOBKEYといえば、その代名詞とも言えるのがカスタムメカニカルキーボード「Rainy75」です。
その最大の特徴は、高級機に匹敵する厚みのあるアルミニウムの切削精度と、コトコトと心地よい雨音のような打鍵音でした。
「数万円クラスの打鍵感が1万円台で手に入る」という事実は、多くのユーザーを沼に引きずり込みました。
ZEN65 RTは、その遺伝子を色濃く受け継いでいます。
多くのゲーミングキーボードがコストダウンや軽量化を理由にプラスチック筐体を採用する中、ZEN65 RTはフルアルミニウムボディを採用しています。
これにより、打鍵時の不要な共振を抑え込むと同時に、デスク上でズレることのない「岩のような」重量感を確保しています。
キーボード自体が重いことは、激しいマウス操作でデスクが揺れてもキーボードが微動だにしないという、ゲーマーにとっての大きなメリットにもなります。
しかし、メカニカル版と決定的に違うのは、その心臓部です。
従来の物理的な接点を持つ金属スイッチではなく、磁力によってアクチュエーションポイント(作動点)を可変させる「磁気スイッチ(Magnetic Switch)」を搭載しています。
これにより、ゲーマーが求める瞬時のストッピングと移動を可能にしています。
メカニカルの「心地よさ」と、磁気スイッチの「速さ」。相反する二つの要素を高次元で融合させたのが本機なのです。
Pro版とLite版の違いを徹底比較(プレート・スイッチ・価格)
ZEN65 RTには、ユーザーの予算や好みに合わせて「Pro」と「Lite」の2つのモデルが用意されています。
基本的なラピッドトリガー性能や筐体の形状、ソフトウェアの機能は同じですが、搭載されるパーツとカラーバリエーション、そして打鍵感に明確な違いがあります。
以下に主な違いを詳細にまとめました。
| 特徴 | ZEN65 RT Pro | ZEN65 RT Lite |
| 価格(税込参考) | 約 29,000円 〜 30,580円 | 約 26,000円 〜 27,800円 |
| カラー展開 | ホワイト、シルバー、レッド | ホワイトのみ |
| 搭載スイッチ | TTC KOM POM(ポム) | TTC KOM RGB |
| スイッチ素材 | 全てPOM素材(自己潤滑性が高く摩擦が少ない) | 一般的な素材+RGB透過重視のトップハウジング |
| マウントプレート | カーボンファイバー(Carbon Fiber) | FR4(ガラスエポキシ) |
| 打鍵感・音 | 硬質で乾いた「カツカツ」音、高めのピッチ | Proよりややマイルドで角が取れた音 |
| ライティング | スイッチが不透明なため控えめ | 透明ハウジングでRGBが綺麗に透過 |
選ぶ際のポイント:
- Pro版がおすすめな人:
カーボンプレート特有の「カツカツ」とした硬質でクリスピーな打鍵音を好む人。
また、レッドやシルバーといったメタリックな質感を強調するカラーを選びたい人。
カーボンはFR4よりも剛性が高いため、底打ち時のフィードバックがより鮮明で、連打のリズムが取りやすい傾向にあります。 - Lite版がおすすめな人:
ホワイトカラーで統一したい人。
コストを抑えつつ、ZEN65 RTのラピッドトリガー性能を享受したい人。
FR4プレートは適度な硬さと柔軟性のバランスが良く、カーボンほど音が甲高くならないため、長時間のタイピングでも聴き疲れしにくい可能性があります。
特にPro版に採用されているカーボンファイバープレートは、レーシングカーや航空機にも使われる軽量かつ高剛性な素材であり、磁気スイッチの高速動作において非常にシャープな打鍵感を提供してくれます。
FPS用途としては、この「曖昧さのない硬さ」が操作精度においてプラスに働く場面が多いでしょう。
開封から驚きを呼ぶ豪華な付属品とキャリングケース
WOBKEY製品の満足度は、製品そのものだけでなく、パッケージング(開封体験)にも表れています。
ZEN65 RTは、一般的な段ボール箱や薄い化粧箱ではなく、なんと専用のグレーのキャリングケースに収められて届きます。
これは持ち運びを前提とするオフライン大会への参加者にとって非常に実用的です。
主な付属品一覧:
- ZEN65 RT キーボード本体(専用の布製カバー入り)
- 専用セミハードキャリングケース(ジッパー付き)
- USB Type-C ケーブル(高品質な編組ケーブル)
- キーキャップ&スイッチプラー(一体型ツール)
- 交換用スイッチ × 4個(WOB Studio「鼓動」発泡軸 Deep Clacky版)
- 説明書、カード類、FNレイヤーガイド
特筆すべきは、おまけとして付属する4つのピンク色のスイッチです。
これは「WOB Studio」の新作スイッチで、通称「鼓動(Kodou)」の発泡軸(Deep Clacky版)と呼ばれるものです。
標準搭載のTTC KOMスイッチが「高音・カツカツ系」なのに対し、この付属スイッチはより「コトコト」とした低音寄りの音質傾向を持っています。
「WASDキーだけこれに交換してみてください」と言わんばかりの4つという個数。
ユーザーにカスタマイズの楽しさを提案する、キーボード好きの心をくすぐる憎い演出です。
ゲーマーを勝利へ導くWOBKEY ZEN65 RTのラピッドトリガー性能

最短0.01mmの調整幅と高精度なデッドゾーン制御
ZEN65 RTの核心となるのが、磁気スイッチによるラピッドトリガー機能です。
通常のメカニカルスイッチは、キーを離してもリセットポイント(例えば2.0mm地点)まで戻らないと入力が解除されません。
しかしラピッドトリガーは、キーを離した瞬間(例えば0.1mm戻した瞬間)にリセットがかかり、再度押し込んだ瞬間にオンになります。
これにより、FPSにおけるストッピングや、格闘ゲームにおける微細なステップ入力が劇的に高速化します。
- アクチュエーションポイント(作動点): 0.1mm 〜 3.3mm の範囲で、0.1mm単位で設定可能。
- ラピッドトリガー感度: 最短 0.01mm から設定可能。
- 調整単位: 0.01mm 〜 0.05mm単位(モード選択による)。
特筆すべきは、キーを押し切った底打ち地点や、キーを離しきったトップ地点での「デッドゾーン」の少なさです。
一般的に、磁気センサーは底打ち付近やトップ付近で数値が不安定になりやすいため、メーカー側で安全マージン(デッドゾーン)を設けますが、これが大きいと「押しているのに反応しない」「離したのに止まらない」という違和感に繋がります。
ZEN65 RTの実測値においては、デッドゾーンはほぼ「0mm」に近い値から設定可能で、およそ0.09mm〜0.1mm程度という極めて優秀な数値を叩き出しています。
これは、指先のわずかな動きがそのままダイレクトにゲーム内のキャラクターコントロールに反映されることを意味します。
安定性を極限まで高める「非磁性パーツ」の採用
ここがZEN65 RTの最大の技術的トピックであり、他社製品との大きな差別化ポイントです。
WOBKEYは、ラピッドトリガーの挙動を安定させるために、徹底的な「ノイズ対策」を行いました。
ここで言うノイズとは、電気的なものだけでなく、磁力への物理的な干渉も含みます。
ホールエフェクトセンサーは磁力を検知するため、周囲に磁性体(鉄など磁石にくっつく金属)があると、磁場が歪んでしまい、センサーが誤った数値を検知する原因になります。
これを防ぐため、ZEN65 RTでは以下の対策が施されています。
- 非磁性素材の採用:
内部の固定ネジ、プレート、スタビライザーのワイヤーなど、センサー周辺のパーツに磁力を帯びない素材(真鍮やステンレスの特定種、あるいは特殊合金など)を使用しています。 - 温度変化への耐性:
磁石は温度によって磁力が変化する特性があります。
ZEN65 RTは新型センサーとアルゴリズムにより、室温の変化による磁力の変動(ドリフト現象)を補正。
「朝イチはエイムの調子が良かったのに、部屋が暖まってくると感覚がズレる」「なぜか勝手に歩き出す」といった、磁気キーボード特有の怪奇現象。
ZEN65 RTは、物理的な設計レベルでこの問題を排除しようとしています。
これはスペックシートの派手な数値には表れにくい部分ですが、競技シーンで長時間プレイするシリアスなゲーマーにとっては、信頼性に直結する極めて重要な「見えないスペック」です。
8000Hzポーリングレートと低遅延の実力
通信速度においても妥協はありません。
ポーリングレート(PCとの通信回数)は最大8000Hz(8K)に対応しています。
一般的なゲーミングキーボードが1000Hz(1ms)であるのに対し、8000Hzは1秒間に8000回の通信を行い、理論上の遅延は0.125msとなります。
- ポーリングレート: 最大 8000Hz
- スキャンレート: 最大 32000Hz
さらに重要なのがスキャンレート(キーボード内部でスイッチの状態を読み取る回数)です。
これが低いといくら通信が速くても意味がありませんが、ZEN65 RTは最大32000Hzと極めて高く設定されています。
入力遅延の実測テスト(SwaagKeys Neon Tester等を使用)においても、トリガー遅延は0.148ms前後、リリース(リセット)遅延は0.324ms前後という驚異的な数値を記録しています。
これは現行のラピッドトリガーキーボードの中でもトップクラス(上位3機種に入るレベル)の速さです。
「速すぎて人間には体感できない」と言われる領域ですが、0.01秒を争う撃ち合いにおいて、機材による遅延がボトルネックにならないという事実は、プレイヤーに絶対的な自信と精神的な余裕を与えてくれます。
WOBKEY ZEN65 RTのハードウェア設計と独自の打鍵体験

工芸品レベルのアルミニウムケースと背面デザイン
ZEN65 RTを手に取った時、まず感動するのはそのビルドクオリティの高さです。
ケース全体がCNC削り出しのアルミニウムで構成されており、表面のアルマイト処理(アノダイズド処理)は非常にきめ細かく、シルクのようなサラサラとした手触りです。
安価なアルミケースにありがちなザラつきや色ムラは一切なく、角の面取り(チャンファー)処理も完璧で、どこを触ってもバリや鋭利さを感じることはありません。
- サイドプロファイル:
サイドから見た形状は完全なフラットではなく、中央にうっすらと菱形のような膨らみを持たせた立体的なラインを描いています。
光の当たり方で陰影が生まれ、単調な板に見えない工夫がされています。 - ボトムデザイン:
背面(底面)には、2色のウェイトプレートがはめ込まれており、中央に「WOBLAB」のロゴが鎮座しています。
通常使用時には見えない部分にお金をかけ、デザインを施す。
これぞまさにカスタムキーボードの流儀であり、所有者の密かな満足感を高めます。
特にPro版の「レッド」カラーは、単なる赤ではなく、アイアンマンのスーツを彷彿とさせるメタリックで深みのある赤色をしており、デスク上で強烈な存在感を放ちます。
硬めのガスケットマウントとカーボンプレートの特性
Rainy75では、柔らかいガスケットマウントによる「沈み込み」が特徴でしたが、ZEN65 RTは設計思想が全く異なります。
構造上はシリコンのガスケットを使用したガスケットマウントですが、実際に打鍵してみると「非常に硬い」です。
強く押し込んでもほとんど沈み込みません。
分解してみると、横長のシリコンガスケットが確認できますが、可動域は意図的に制限されています。
これは欠点ではなく、ラピッドトリガーの精度を高めるための意図的なチューニングと考えられます。
磁気スイッチは0.1mm単位の深さを検知するため、打鍵によって基板全体がグニャグニャと大きく沈み込んでしまうと、スイッチごとの高さが変わってしまい、意図しない入力や誤作動の原因になりかねません。
Pro版に採用されている「カーボンファイバープレート」の特性も相まって、打鍵感は非常にソリッド(剛性感がある)です。
底打ちのフィードバックが明確に指に返ってくるため、リズムよく連打するプレイには最適です。
「柔らかい打鍵感で癒やされたい」というニーズよりも、「正確な入力を指で感じ取りたい」という競技志向のニーズに応えた設計と言えるでしょう。
TTC KOMスイッチが奏でる「カツカツ」系の高音サウンド
搭載されている磁気スイッチは「TTC KOM」シリーズです。
このスイッチは、WOBKEY独自のチューニングが施されており、以下のような詳細スペックと特徴を持っています。
- 押下圧: 35g ± 5g(軽めのタッチで反応速度重視)
- ストローク: 3.4mm ± 0.2mm
- 音質: ハイピッチ(高音)で「カツカツ」「パチパチ」というクリスピーな音。
- ステム構造: ステム(軸)の内部に小さな衝撃吸収用の突起があり、底打ち時の衝撃を和らげる特殊構造。
- 素材(Pro版): 全パーツがPOM(ポリアセタール)製で、摩擦係数が低く自己潤滑性が高い。
一般的な磁気スイッチは、構造上「カスカス」とした擦れ音や、バネ鳴りが目立ちがちですが、ZEN65 RTはしっかりと「良い音」がします。
内部に詰め込まれたシリコンやフォームなどの吸音材のおかげで、金属ケース特有の「カーン」という反響音は皆無です。
スイッチ本来の音がダイレクトに耳に届きます。
特にカーボンプレートとの組み合わせは、小気味よい高音を奏で、タイピング自体を楽しいものにしてくれます。
Webドライバーの使い勝手と自動キャリブレーション機能
ソフトウェアはインストール不要の「Webドライバー」に対応しています。
ブラウザ(ChromeやEdge)から指定のURLにアクセスするだけで、すぐに設定変更が可能です。
常駐ソフトを嫌うゲーマーにとっては嬉しい仕様です。
- 主な機能: キーリマップ(FN層含む)、ラピッドトリガー設定、LED設定、マクロ、DKS(Dynamic Keystroke)、SOCD(後入力優先など)。
- 便利機能: 自動キャリブレーション。
特に「自動キャリブレーション」は非常に優秀です。
キーボードの電源投入時などに、現在の環境に合わせてセンサーの基準値を自動で補正してくれます。
これにより、気温差による誤作動や、経年劣化による磁力の変化をユーザーが意識することなく防いでくれます。
「何もしていないのに勝手に入力される」というトラブルを未然に防ぐ、縁の下の力持ち的な機能です。
ただし、現状では日本語翻訳が不完全であり、一部中国語が混ざっていたり、項目の意味が直感的に分かりにくい箇所があったりと、発展途上の側面もあります。
私の体験談:WOBKEY ZEN65 RTを使い込んで感じたリアルなレビュー

ここでは、実際に私がZEN65 RT(Pro版レッドモデル)を使用し、ゲームプレイや執筆作業を通じて感じた生の声をお届けします。
デザインの衝撃:Pro版レッドの「月」とグラデーションの美学
まず、手元に届いたPro版レッドモデルを見て驚いたのが、キーキャップのデザインです。
単なる赤一色ではありません。左側の濃い赤から右側に向けて淡くなっていくグラデーションがかかっており、さらに右半分のキーキャップは半透明(ポリカーボネート製)になっています。
そして、左上の「Escキー」には、月の満ち欠けのようなデザインが施されています。
これがグラデーションと相まって、まるで夕暮れから夜空へと移り変わる情景の中に月が浮かんでいるような、幻想的な雰囲気を醸し出しています。
「ゲーミングキーボード=光ればいい」という短絡的な思考ではなく、プロダクトとしての美しさを追求している点に、所有する喜びを強く感じました。
PCの電源が入っていない時でも、デスクにあるだけで絵になるキーボードです。
打鍵感の深堀り:初期スイッチと付属スイッチ(鼓動版)の比較
デフォルトのTTC KOM POMスイッチは、前述の通り「カツカツ」とした硬質な音がします。
これはこれで爽快感があり、特にヘッドセットをしてゲームをしている時には、指先に伝わる明確なクリック感が心地よいです。
しかし、興味本位で付属していた4つのピンク色のスイッチ(WOB Studio 鼓動版)にWASDキーだけ交換してみたところ、世界が変わりました。
こちらは「コトコト」という低めの音で、底打ちの感触も少しマイルドになります。
耳に優しく、高級感がさらに増したような印象です。個人的には、この付属スイッチの感触が非常に好みでした。
もし予算が許すなら、別売りでこのスイッチを揃えて全キー換装したいと思わせるほどのクオリティです。
デフォルトで「味変」を楽しめるこの配慮は素晴らしいと感じました。
FPSゲームでの挙動:温度変化にも強い安定感の実証
実際にVALORANTのデスマッチやランクマッチで長時間使用してみました。
設定はアクチュエーション0.3mm、ラピッドトリガー0.15mmとかなり攻めた設定にしましたが、誤入力が全く起きません。
特に感心したのが、長時間プレイしてキーボード本体が手の熱で多少温まっても、入力ポイントがズレる感覚がなかったことです。
安価な磁気キーボードだと、プレイ中に勝手に移動入力が入ってしまったり、逆に止まりが悪くなったりすることが稀にありますが、ZEN65 RTではその気配すらありませんでした。
「非磁性パーツ」や「温度補正」といった謳い文句は、単なるマーケティング用語ではなく、実戦でしっかりと効果を発揮していると感じました。
ストッピングのキレも抜群で、思った瞬間にキャラクターが「ビタッ」と止まる感覚は、一度味わうと通常のメカニカルには戻れません。
キーキャップの素材差による左右のフィーリングの違いについて
一点だけ、好みが分かれるかもしれないポイントを発見しました。
Pro版レッドモデル特有の仕様ですが、左側のPBTキーキャップと、右側のポリカーボネート(透明)キーキャップで、指触りと打鍵音が異なります。
- PBT側(左): サラサラして乾いた音。摩擦があり指が滑りにくい。
- ポリカ側(右): ツルツルして少しペタつく感触。音はより高い「パチッ」という音(マーブル音に近い)。
ゲーム中は左手(WASD周辺)しか使わないので全く気になりませんが、チャットや文章入力で両手を使うと、左右で打鍵のフィーリングや音が違うことに違和感を覚える人がいるかもしれません。
統一感を重視するなら、ホワイトやシルバーなどの通常モデルを選ぶか、あるいはキーキャップを別途購入して交換することをお勧めします。
ソフトウェアの日本語対応状況とセットアップの注意点
Webドライバーにアクセスした際、初期設定が中国語になっており少し焦りました。
右上の言語設定から「日本語」を選べますが、翻訳精度は「Google翻訳レベル」かそれ以下です。
例えば、ラピッドトリガーの設定画面やスイッチの選択画面に中国語の表記がそのまま残っていたりします。
機能自体は問題なく動作しますが、初心者の方は「これ何の設定だろう?」と少し戸惑うかもしれません。
もし設定を弄りすぎて挙動がおかしくなった場合は、「リセット」ボタンを押せば一度接続が切れ、工場出荷状態に戻ります。困ったらリセット、を覚えておけば大丈夫です。
このソフトウェアのローカライズ(翻訳)については、今後のアップデートに強く期待したいところです。
体験談の総括:性能と所有欲を同時に満たす稀有な存在
ZEN65 RTを使ってみて感じたのは、「ガジェットとしての完成度の高さ」です。
単にゲームに勝つための道具であれば、プラスチックの軽いキーボードでも事足ります。
しかし、ZEN65 RTは、デスクにあるだけで気分が上がる高級感と、トッププロがそのまま大会で使えるレベルの性能が見事に同居しています。
「ラピッドトリガーに興味があるけど、おもちゃっぽい見た目のキーボードは嫌だ」「打鍵音にもこだわりたい」というワガママな要望を、高い次元で叶えてくれる一台でした。
ゲームをしていない時でさえ、そのアルミの冷たい感触に触れていたくなる、そんな魔力があります。
WOBKEY ZEN65 RTに関するQ&A

WOBKEY ZEN65 RTに関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
Pro版とLite版、性能に違いはありますか?どちらを買うべきですか?
ラピッドトリガーや応答速度などの「基本性能」に違いはありません。
どちらも同じセンサー、同じMCU(制御チップ)を搭載しており、8000Hzポーリングレートや0.01mm単位の調整が可能です。 違いは「打鍵感(音)」と「見た目」です。
- Pro版(カーボンプレート): 「カツカツ」とした硬質で高い音が好みの方、赤やシルバーの金属筐体が欲しい方におすすめです。
- Lite版(FR4プレート): コスパ重視の方、ホワイトでデスクを統一したい方、少しマイルドな打鍵音が好みの方におすすめです。
ワイヤレス(無線)接続には対応していますか?
いいえ、有線接続のみです。
ZEN65 RTは通信速度と安定性を最優先した競技用モデルであるため、Bluetoothや2.4GHz無線の機能は搭載されていません。その代わり、最大8000Hzという超高速なポーリングレートを実現しています。ケーブルは脱着式のUSB Type-Cです。
キースイッチは交換できますか?(ホットスワップ対応?)
はい、ホットスワップに対応しています。
付属の工具を使ってスイッチを引き抜き、交換することが可能です。製品には試し書き用として「WOB Studio 鼓動(Kodou)スイッチ」が4つ付属しています。 ただし、磁気スイッチ(ホールエフェクトスイッチ)は、メカニカルスイッチと異なりメーカーごとの互換性がシビアです。磁石の極性や磁束密度が合わないと正常に動作しないため、交換する場合はWOBKEYが公式に対応を謳っているスイッチ(Gateron Magnetic Jadeなど一部互換性がある場合もありますが、基本は純正や推奨品)を選ぶことを強く推奨します。
設定ソフトウェアは日本語に対応していますか?
部分的に対応していますが、完全ではありません。
Webドライバー(ブラウザで開く設定画面)には言語設定で「日本語」がありますが、翻訳精度はまだ低く、一部のメニューや説明が中国語のまま残っている箇所があります。 とはいえ、ラピッドトリガーの数値設定やキー配置の変更といった主要機能は直感的に操作できるため、使用にはそこまで困らないでしょう。今後のアップデートでの改善が期待されます。
PS5などの家庭用ゲーム機でも使用できますか?
基本的なキーボードとしては動作しますが、性能をフルに発揮できない可能性があります。
USB接続で認識はしますが、PS5などのコンソール機は通常1000Hz(125Hz〜1000Hz)までの入力しか受け付けない仕様が多く、ZEN65 RTの「8000Hzポーリングレート」などの超低遅延性能は活かしきれません。また、ラピッドトリガー機能自体はキーボード側のオンボードメモリに保存されるため機能しますが、設定変更にはPC(ブラウザ)が必要です。
「SOCD(Snap Tap相当)」機能はありますか?
はい、対応しています。
設定ソフト内に「SOCD」の項目があり、左右移動キー(AとD)を同時に押した際の挙動を設定可能です。「後に入力した方を優先(Last Input Priority)」などに設定することで、VALORANTやCS2などのストッピングや切り返し動作を高速化・安定化させることができます。
Mac(macOS)でも使用できますか?
はい、基本的なキーボードとして使用可能です。
Webドライバー(設定画面)はGoogle Chromeなどのブラウザベースなので、Macからでもアクセスして設定変更が可能です。 ただし、キーボード配列の切り替えスイッチ(Win/Mac)のような物理スイッチはなく、キーキャップの印字もWindows向け(Alt, Winなど)になっています。Macで使用する場合は、「Command」や「Option」キーの割り当てをOS側またはキーボード設定側で調整する必要があるかもしれません。
職場や静かな場所で使っても大丈夫ですか?(静音性は?)
あまりおすすめしません。打鍵音は比較的大きめです。
特にPro版(カーボンプレート)は、反響を抑える設計とはいえ、「カツカツ」「パチパチ」という高周波寄りの硬質な音が響きます。メカニカルキーボード特有の音が許容される環境なら問題ありませんが、静かなオフィスや図書館、家族が寝ている寝室などでは「うるさい」と感じられる可能性が高いです。静音性を求める場合は、静音タイプの磁気スイッチ(互換性のあるもの)を探すなどの工夫が必要です。
市販のキーキャップに交換できますか?
はい、可能です。
搭載されているTTC KOMスイッチの軸(ステム)は、一般的なメカニカルキーボードと同じ「十字型(Cherry MX互換)」です。そのため、Amazonや専門店で販売されている多くのカスタムキーキャップを取り付けることができます。 ただし、右Shiftキーが短め(1.75u)の「65%配列」なので、キーキャップセットを購入する際は、65%レイアウトに対応したセット(シフトキーのサイズ違いが含まれているか)を確認してください。
Rainy75を持っていますが、打鍵感は同じですか?
いいえ、かなり異なります。
Rainy75は「柔らかいガスケットマウント」による沈み込みと「コトコト」した低音が特徴でしたが、ZEN65 RTはラピッドトリガーの精度を優先して「硬めのガスケットマウント」になっています。沈み込みはほとんどなく、底打ちはかなり硬め(ソリッド)です。 「Rainy75のような柔らかい打ち心地」を期待して買うと、硬さに驚くかもしれません。あくまで「競技用機材」としての調整がなされています。
DKS(Dynamic Keystroke)機能とは何ですか?FPSで使えますか?
「キーの押し込み深さ」に応じて異なる動作を割り当てる機能です。
例えば、「浅く(0.5mm)押したら『歩き』、深く(3.0mm)まで押し込んだら『走り』」といった操作を1つのキーで行えます。 ただし、VALORANTなどのFPSにおいては、誤操作の原因になりやすいため、基本的には「使用しない」設定(無効化)が推奨されます。MMORPGや普段のPC操作でのマクロ的な使い方には便利かもしれません。
市販のコイルケーブルを使いたいのですが、ポートの位置は?
USBポートはキーボードの「背面中央(センター)」にあります。
多くのカスタムキーボードは左側にポートがあることが多いですが、ZEN65 RTは真ん中です。 差し込み口周辺のスペースにはある程度の余裕がありますが、コネクタ部分が極端に太いカスタムケーブルや、特殊な形状のアダプタを使用する場合は、ケースに干渉しないか注意が必要です。一般的なコイルケーブルであれば問題なく使用できます。
「ラピッドトリガー感度 0.01mm」は、すぐに使いこなせますか?
最初は「暴発」に悩まされる可能性が高いです。
0.01mmという数値は、指を乗せているだけのつもりでも、脈拍やわずかな震えで「入力ON/OFF」が切り替わってしまうほどの敏感さです。 プロゲーマーでも0.1mm〜0.15mm程度で運用している人が多いです。購入直後は0.01mmに設定せず、0.2mmくらいからスタートして、徐々に数値を詰めていく(敏感にしていく)調整方法をおすすめします。
WOBKEY ZEN65 RTレビューのまとめ

WOBKEY ZEN65 RTは、メカニカルキーボードで培った圧倒的なビルドクオリティを武器に、磁気キーボード市場に一石を投じる意欲作です。
ZEN65 RTのメリット・デメリット整理
メリット
- 圧倒的なビルドクオリティ: フルアルミニウムボディの質感は同価格帯で頭一つ抜けており、他社製プラスチック機とは比較にならない。
- トップクラスの応答速度: 8000Hzポーリングと実測0.1ms台の低遅延により、遅延の不安から解放される。
- 物理的な安定性: 非磁性パーツと温度補正により、環境変化に強く誤作動が極めて少ない。
- 打鍵音の良さ: 磁気スイッチ特有の不快なノイズがなく、クリスピーで心地よい音が楽しめる。
- 豪華な付属品: キャリングケースや高品質な付属スイッチ(鼓動軸)がお得感を底上げしている。
デメリット
- ソフトウェアの翻訳: 日本語化が不完全で、一部中国語が残るため、初心者には少し敷居が高い。
- 素材による打鍵感の差異(Redのみ): Pro版レッドの左右素材違いは、デザイン優先のため好みが分かれる。
- 重量: アルミニウム製のため重く、頻繁に持ち歩くには気合が必要(ケースはあるが、リュックはずっしり重くなる)。
おすすめの初期設定と運用ポイント
購入後は、まずWebドライバーに接続し、「自動キャリブレーション」が機能しているか確認しましょう。
ラピッドトリガー設定は、慣れるまでは0.15mm 〜 0.2mm程度から始めるのがおすすめです。
0.01mmは理論値としては凄いですが、人間側の指の震えや緊張まで検知してしまうため、現実的な運用では少し数値を緩めたほうが安定し、誤爆も減ります。
また、付属の「鼓動スイッチ」は非常に質が良いので、届いたらすぐにWASDキーだけでも交換して、その音と感触の違いを楽しんでみてください。
小さなカスタマイズですが、愛着がぐっと深まります。
他社製ラピッドトリガーキーボードとの立ち位置の違い
- vs Wooting 60HE:
ソフトウェアの完成度とコミュニティの厚さはWootingが上ですが、ケースの質感、打鍵音の良さ、購入してそのまま使える完成度の高さはZEN65 RTが圧勝です。
Wootingをアルミケースに換装する手間とコストを考えれば、ZEN65 RTのコスパは異常です。 - vs Pulsar / DrunkDeer / Elephant Robotics:
価格帯は近いですが、ZEN65 RTは「カスタムキーボード寄り」の設計思想であり、高級感を求めるならこちらに軍配が上がります。
プラスチックの軽さを好むか、アルミの重厚感を好むかが分かれ目です。
ProとLite、あなたにはどちらが適しているか
- Pro版(約3万円):
硬質な打鍵感、カーボンプレートの鋭いレスポンス、そして高級感あるカラーリング(特にレッドの月デザイン)に惹かれる方。
予算が許すなら、この体験は唯一無二です。 - Lite版(約2.7万円):
白いデバイスでデスクを統一したい方。
性能差(ラピッドトリガーや遅延)はないため、コストを抑えつつZEN65 RTの安定性を享受したい方。
FR4プレートのマイルドな打鍵感は、普段使いとのバランスも良好です。
WOBKEY ZEN65 RTは「買い」か?
結論から言えば、間違いなく「買い」です。
特に「3万円前後で、性能も見た目も打鍵音も全部欲しい」というユーザーにとって、これ以上の選択肢は現状ほとんどありません。
Rainy75がメカニカルの価格破壊を起こしたように、ZEN65 RTは「高級ラピッドトリガーキーボード」の敷居を大きく下げ、品質の基準を一段階引き上げました。
WOBKEY ZEN65 RTレビューの総括
ラピッドトリガーキーボードは、もはや「あれば有利」なデバイスではなく、「ないと土俵に立てない」デバイスになりつつあります。
だからこそ、長く付き合える相棒として、性能だけでなく「愛せるデザイン」と「心地よい操作感」を持つZEN65 RTを選んでみてはいかがでしょうか。
このキーボードは、あなたのゲームプレイを支える最強の武器になると同時に、デスクを彩る最高のアートピースになるはずです。
次のラウンドが始まるその瞬間まで、その美しいアルミの筐体を眺め、スイッチの音を楽しんでください。
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